ソトチク素材とは、
風雨や日光に晒されたり、生命活動の場にあり続けることで
時間や生命の営みを記憶した素材のこと
想定外を構築する。外築=SOTOCHIKU
人間が人間でいるために、<想定外>を空間の中に取り入れることをめざしてきたGRIDFRAMEが、創業から20年後にたどり着いた手法をSOTOCHIKU(ソトチク)という。

この30年程で建材のカタログ化が急速に進み、巷のほぼ全ての空間づくりの材料はカタログから購入され、それらが加工されて「モノ化」され、さらにモノがアセンブルされて「空間化」されている。つまり、通常の空間づくりで行われているのは、次の通りである。
材料購入→モノ化→空間化
GRIDFRAMEはこれに反旗を翻してきた。1998年創業以来、自社工場の存在を活かし素材に独自の加工を加えて「材料化」する、というプロセスにこだわった。つまり、GRIDFRAMEの空間づくりは次の通りである。(独自の材料化プロセスを2010年からMateri-ars(マテリアルス)と呼ぶようになった。)
素材購入→材料化→モノ化→空間化
だが、それで満足していたわけではない。ぼくらには創業当時からある一つの願いがあった。ぼくらは日常の中で道を歩く途中、さまざまな古い壁や塀にさまざまな時間の記憶を発見しては、それらを空間づくりの素材として使用することを夢見ていたのだ。
そのような素材をどうやって集めることができるか、がぼくらの長年の課題だった。寄付控除の仕組みを利用するアイディアを得たのは2018年のこと。ぼくらはこれから壊される建物などから、時間を記憶した素材を寄付で集める仕組みを整えて、この素材採取の活動をSOTOCHIKUと名付けて、2020年からプロジェクトが動き始めた。SOTOCHIKU素材は空間全体の一部に過ぎないが、それでも空間全体に与える影響は絶大だ。

ようやくGRIDFRAMEの実力がフルに活かされるときが来た。
素材採取→材料化→モノ化→空間化
このプロセスでできあがった空間を、SOTOCHIKU空間と呼んでいる。
このカタチができたことにより、遠い未来、時間を記憶したSOTOCHIKU空間から、さらに素材採取を行う循環のカタチが見えてきた。
素材採取→材料化→モノ化→空間化→素材採取・・・

SOTOCHIKU空間には、三つの想定外がある。
一つ目は、「想定外の素材」である。そのままでは廃棄処分となってしまう、建材になるとは誰も思わなかった<SOTOCHIKU素材>を使う想定外である。
何に出会うか、を事前に知ることはできない。

二つ目は、「想定外の制作」である。
出会ったSOTOCHIKU素材をどのような感性で捉え、どのように唯一無二の制作に繋げるかの想定外である。
素材と向き合う前に、制作のゴールや方法を知ることはできない。

三つ目は、SOTOCHIKU空間で時を過ごす人にとっての「想定外の出会い」である。
ぼくらつくり手は、SOTOCHIKU素材のもつ生のエネルギーがつくる過程で失われないように心を配る。ちょうど、料理人が生の食材を調理するときにある栄養素が失われないように心を配るように。
SOTOCHIKU空間で過ごす人々が想定外のモノに一対一で向き合い、それぞれの人が持って生まれた余りある力を発揮できることを願って。