SOTOCHIKU&89 unLtd.

現在、千葉県鋸南町の保田駅前に、株式会社「旅と平和」の佐谷恭さんと一緒に、ぼくらGRIDFRAME初のショールームである「パクチー銀行本店」-SOTOCHIKU&89 unLtd.を制作中だ

 

どのような空間をつくりたいか、その思いについて・・・

 

保田の土壁

 

 

人間の精神に関わりたい

 

その空間にいると「生きる力」を取り戻せる

 

元々、空間にはそんな力があると信じて、そんな空間をつくりたくてここまでやってきた

 

だが、世間一般の多くは空間のデザイナーによもやそんなことを考えている者がいるとは思っていないし、期待もしていない

 

そんな一般の網に絡めとられる中で、嘯く自分が滑稽に見えてきて、志を失っていくデザイナーが後を絶たない

 

きっと他のどんな仕事についても同じことが言えるだろう

 

しかし、この社会の中では、実はそういう人たちの方がむしろまともで、ぼくがこの年になって平気で空間の力を信じていると言えるのは、他人は持っている何かがぼくに欠けているからに過ぎない

 

そんな自分の欠損を自覚したのはそんなに昔のことではないのだけれど、ぼくの好きなモノやコトについて思い出してみると、どうやら何かが欠損している状態を好むところが昔からあったように思う

 

そんな自分が壊れゆくモノを素材とするSOTOCHIKUにたどり着いたのは、必然だったのだろう

 

土壁の採取

 

 

SOTOCHIKUの初めてのショールームは、佐谷恭さんが頭取を務める「パクチー銀行本店」でもある

 

以前、佐谷さんは新しいことをやるときに障害になるシステムがあるなら、そのシステムの外に出て実現すればいい、と語られた

 

システムに従う世界の外に、もう一つ別の世界をつくる

 

パクチーハウスは、そうやってつくった新しい世界が、元の世界を凌駕した最も清々しい成功例だろう

 

強固に映っていた既存システムはその結果として瓦解せざるを得なくなる

 

こうして時代は進んでいく

 

「パクチー銀行本店」で新たに、既存システムの外に別の世界をつくることに挑む

 

土壁の欠片

 

 

この「パクチー銀行本店」の準備をしている中、リモート授業を受けていた小学生の息子が自律神経失調症になった

 

妻は考えられうる限りの医者を訪ねて診ていただいたけれど、むしろさまざまな精神疾患が既存システムの中でどのようにつくられていくかを目の当たりにしたような気がする

 

現在、睡眠障害などの症状は快方に向かっているが、もしも医者の言うままに向精神薬の服用を続けていれば、息子は引きこもりの一人になってしまったかもしれない

 

妻と二人で判断し、断薬を選んだのは本当に良かったと思っている

 

人は誰でも生を受けた瞬間から、体一つになっても常に余りある「生きる力」を手にしているのだから、誰もがただその人のままでいられればよいのだ

 

ぼくや息子に何かが欠損していたとしても、「生きる力」は少しも揺るがない

 

それどころか、水の流れのように、欠損した個所からすべてが動き始めるかもしれない

 

コロナによって社会に不安が広がり、精神疾患を患う人は子供たちも含めて急激に増えているという

 

この国の引きこもり人口は150万人とも言われているが、スタグフレーョンの到来が告げられる今、この人たちの「生きる力」を取り戻していくことは命に関わる課題ではないか

 

「パクチー銀行本店」では、常に生成と崩壊が同時に進行する自然界の時間の流れを追うSOTOCHIKU空間をつくり、訪れる人たちの「生きる力」を取り戻すための、あらゆるモノやコトをここに結集していく

 

既存システムに従う世界では変えていけないことを、ここにあるもう一つの世界で変えていくために・・・

 

 

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