熊本出身、東京暮らしのぼくにとってすっかり第二の故郷と呼ぶにふさわしい場所に変わりつつある鋸南町。
そこに人が集い、小さなグループ毎にソトチク散歩し、見てきたものをパーティで報告しあう。それが共同経営者の佐谷恭さんが主催する鋸南シャルソン。
ソトチク散歩とは、経年変化したものの中に、劣化ではなく魅力を増したと感じられるもの(SOTOCHIKU)を探す散歩だ。
雨が降ったり止んだりの天気の中、緑の多いこの町では、塀や電柱や外壁にさまざまな種類の地衣類を発見することができる。
5月の雨はやさしく、家族3人、誰も傘をささずに歩く。黒い保田石にキイロダイダイゴケの濡れた黄色が美しい。
家屋の壁の色褪せた木板、物置の壁のさまざまな色の金属板、舗装された小道のつぎはぎのコンクリート、・・・
この町のどこにいても、辺りを見回せば、何かしらのソトチクを見つけることができる。そして、そのほとんどが、グリッドフレームに寄付していただければ、新しい空間づくりの素材として生かせるものばかりだ。
黒ビニールをはった農閑期とみられる畑一面にヒルザキツキミソウが咲いている。
ちょうど作業に出てこられたお婆さんに「花がきれいですね」と子供が語りかける。
お婆さんはうれしそうに、「放っておいたら、どんどん広がって、畑全部にピンクが広がったのよ」と答える。
自然の力が勝手に美しい景観をつくりだしてくれる。
この町の豊かな自然は、この町を、ソトチク素材とそれに調和した美しい景観の宝庫にしている。
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