「予定不調和」とは無限の探求を意味する

グリッドフレームが空間をつくるときの基本姿勢として「予定不調和」というものがある。それを言うと、いい加減にやっているのではないか、という誤解を招くこともあるかもしれない。この言葉には、少し説明を要する。

古いプラモデルを集めて、そのままのパーツを溶着していく 何ができるかを予想することはできない

空間をつくるという行為は、空間に創造的に秩序を与えていく行為だと捉えている。設計段階で全てを決めてしまうとその瞬間に創造的な行為は終わってしまい、その後の制作・施工は単に設計図という秩序に従うだけになってしまう。つまり、そこには自由がない。

しかし、実は、制作・施工にはたくさんの創造的な閃きの源泉がある。その段階で得た閃きを空間に生かすためには、設計はコンセプトの作成とラフな計画に留めて、つくりながら自由に考えることが大事で、試行錯誤を引き渡すまでずっと繰り返す。それがぼくらがつくり得る最もよい空間に到る方法だと考えている。

上記のオブジェと一体化する棚

実際に、この方法でできあがる空間は、設計で描かれたものとはかなり違う結果となることが多い。しかし、プロセスで多くの試行錯誤を経た分だけ、設計時よりもはるかに豊かな空間が現れる。

「予定不調和」を生み出すことは決していい加減な姿勢ではなく、むしろその逆だと言っていい。

上記の棚は、何ができるか予想できないオブジェ2となる

では、この方法は、今後の時代に有効だろうか?

一般に、秩序と自由は対立する、という考えがある。人が集まって生きていくには、秩序が必要だが、各人に自由を与え過ぎると秩序が乱れてしまう、という考えだ。

この考えを、ロシアとウクライナの戦争に当てはめると、上から秩序を押し付けようとするロシアと、国民ができる限りの自由を行使して対抗するウクライナと、どちらを応援するかの理由を失ってしまう。

では、なぜ世界はこれほどまでにウクライナを応援するのか?それは、世界中の人々が、秩序と自由は対立するものではなく、自由が秩序を形成するものと信じているからだと思う。そして、これが今後の世界で最も大切な生きる姿勢ではないだろうか。

人が集まって生きるとき、自由に学び、考え、行動することによって秩序を形成していく時代に近づいていかねばならないという思いがある。

オブジェ2は、中学受験ドクター横浜校の教室の中心に配置された本棚+机となる

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